Barbourのオイルドジャケットは本当に良いジャケットなのか?
Barbourと言えば、今やどのファッションメディアでも取り上げられている、超では収まらない程の人気のブランド。
寒くなってくると、街中がBarbour People(バブアーピープル=Barbour(バブアー)のオイルドジャケットを羽織った人達)で溢れかえります。
contents
- 「Barbour®(バブアー)」ブランド概要
- 漁師の作業着として生まれたオイルドジャケット
- 英国王室御用達ブランド「Barbour®(バブアー)」
- 着る場所を選ぶオイルドジャケット
- メンテナンス次第で一生物?
- チャールズ皇太子の愛用品
- 歴史やデザイン、その他、確かに魅力的ではあるが・・・
- Barbour(バブアー)のノンオイルのジャケット
- UNIQLOからBarbour風ジャケットが発売
- GUから「ほぼ」Barbourなジャケットが発売
- Barbour(バブアー)公式からウォッシュドビデイルが発売
- 日本でオイルドジャケットを使いこなすのは難しい
- 「Barbourのオイルドジャケット」はめんどくさい( Youtube動画 )
「Barbour®(バブアー)」ブランド概要
英国のブランドで、日本では株式会社八木通商の子会社、「スープリームスインコーポレーテッド株式会社」が「Barbour Japan(バブアージャパン)」を運営。ファッションECの大手「ビービーエフ」が「株式会社Barbour partners Japan(バブアーパートナーズジャパン)」を運営(2022年9月~)。
楽天市場やAmazonでも販売されており、SHIPSやBEAMS等の大手セレクトショップや、地域密着型の街の小さなセレクトショップでも取り扱っており、全国各地で購入することができます。もちろん直営の「オンラインストア」での購入も可能。
そんな人気のBarbourのオイルドジャケットは、本当に良いジャケットなのでしょうか?
今日はそんな疑問を、Barbourのオイルドジャケットの代表モデルといっても過言ではない「Bedale(ビデイル)ジャケット」を自ら5年使用した経験を基に解析してみたいと思います。
[写真]Barbour® ビデイルジャケット
漁師の作業着として生まれたオイルドジャケット
悪天候の下で働く漁師など労働者の為に、油を塗った布製のレインコート、いわゆる道具として生まれたBarbourのオイルドジャケット。
ブランドの進化と共に様々なデザインのモデルが発売され、ファッションアイテムとして日本に入ってきました。
Barbourのオイルドジャケットの人気は何と言っても見た目のデザインの良さ。
コーデュロイの襟とオイルドクロスの相性は抜群で使用を重ねていくにつれて味わいを増していきます。
ハンドウォーマーポケットやボタンの配置も絶妙で、体型を選ばないラグランスリーブ、ショート丈のBedaleジャケットは着まわしが利くデザインです。
コットン生地にオイルを塗り込んで表面にオイルの層を作ることで、雨の滲入を防いだり(防水)、風を通さない(防寒)機能があることも特徴です。
英国王室御用達ブランド「Barbour®(バブアー)」
[写真] ロイヤルワラント・マーク
The Royal Warrant Holders Association
英国王室御用達ブランドだということも人気の要因となっているのかもしれません。
日本でいう宮内庁御用達と同じような意味合いがあり、1155年から始まったと言われている800年以上続く英国の伝統。
英国王室御用達(ロイヤルワラント) 認定を行えるのは、イギリス王室の中でも「エリザベス二世」、エリザベスの夫である「エジンバラ公」、その長男の「チャールズ皇太子」の3名。
認定を行うことができる3名全員から認定を受けているブランドなのだから間違いないだろうと購入した人も多いと思います。上の画像左から、エリザベス女王(エリザベス・アレクサンドリア・メアリー)、エジンバラ公(エジンバラ公爵フィリップ)、チャールズ皇太子のロイヤルワラントマークです。
ロイヤルワラントの数で年代判別が可能
- 1ワラント 1974年~エジンバラ公
- 2ワラント 1982年~エリザベス女王
- 3ワラント 1987年~チャールズ皇太子
Amazon Kindle Unlimited加入で0円で読むことができます(PC、スマホで閲覧可能)
着る場所を選ぶオイルドジャケット
見た目やブランド背景に関しては文句のつけどころが無いBarbourのビデイルジャケットですが、コットンの生地にオイルを塗り込んで着るのが前提となっているオリジナルのヘビーウェイト(2016年12月:訂正)ワックスドコットンジャケットは、どこにでも気軽に着ていくことができるものではありません。
Barbour®のオフィシャルサイトにも記載されていることですが、表面のオイルの層が周りの人に付着してしまうので街中、特に電車やバス等の人が多い場所で着ることはできません。
ごく稀にスーツにオイルドジャケットを着て足元に英国靴、英国紳士を気取って人混みの中を闊歩(かっぽ)している人を見かけますが、紳士の片隅にも置けない完全にマナー違反の与太者です。(個人の趣味・嗜好の問題ではありません)
メンテナンス次第で一生物?
オフィシャルサイトには、ヘビーウエイトのオイルドジャケットはミディアムウェイト・ライトウェイトに比べて厚い生地で、飛び抜けた強度、頑丈さを誇ると記載してあります。
ですが、先日オイル抜きをした際、所謂スッピン状態の生地を触ってみると、その辺にあるシャツと大差無い程薄く、コットンのアウターとしては、決してヘビーウェイトな部類ではないと感じました。※
【※2016年12月訂正】
ビデイルはヘビーウェイト(8オンス)コットンではなくミディアムウェイト(6オンス)コットンを使用。Barbour愛好家のノーザンブリアさんよりご指摘いただきました。ありがとうございました。
オフィシャルサイトを見てみると、ヘビーウェイトが8オンス、ミディアムウエイトが6オンス、ライトウエイトが4オンスとなっています。
オンスは面積に対する生地の重さを表すものですが、 一般的なジーンズが13~14オンスで、ヘビーウェイトと呼ばれる肉厚生地Tシャツが5~7オンスですので、8オンスのBarbourのヘビーウェイトが軽い=薄い生地であることがわかると思います。ビデイルは6オンスのミディアムウェイトなので、グッドウェア等の厚手のTシャツと同程度の軽さ(=厚さ)なのです。
さらに、オイルでコーティングされた状態で5年経過した生地は各所にほつれや穴がありました。ある程度の期間使っている人はわかっていることだとは思いますが、オイルドコットンの耐久性はそれほど高くはない(むしろ低い)。
オイルドジャケットの汚れを取るには、水を含ませたスポンジ等で表面の汚れを落としてさらに上から新しいオイルを塗り込むのが正しい方法(リプルーフ)とされていますが、この方法では当然汚れは完全には落ちません。
汚れは蓄積していき、洗わずに穿き込んだジーンズの生地が弱って破れやすくなるのと同様にやがて生地は弱っていき、少し負荷がかかるだけで簡単に裂けるようになっていきます。
何かの雑誌で手入れをしっかりすれば一生物という表現がされていましたが、オイルドジャケットと長く付き合っていく為にはセルフメンテナンスやセルフリペアだけではどうにもなりません。
一般的なコットン生地のジャケットであれば、穴が開いてしまっても近所の直し屋さんが修理してくれますが、オイルを含んでいるというだけでほぼ間違いなく断られます。
しかし、そこは英国王室御用達ブランドだけあってBarbourではリペアのシステムが確立されています。
「ラヴァレックス」というリプルーフやリペアサービスを行ってくれる会社があります。ホームページを見ると、オイルの塗りなおし(リプルーフ)だけでなく、袖やリブ、ファスナー等の部分交換も料金表と共に記載されています。ちなみにオイルドジャケットのクリーニング+リプルーフは10,000円(税抜)。
ラヴァレックスのリプルーフやリペアサービスを定期的に利用することで長く付き合っていくことは可能であると思います。
チャールズ皇太子の愛用品のBarbour
[写真]チャールズ皇太子も愛用
写真のチャールズ皇太子のように破れる度にパッチを当てて、直しながら着続けるのであれば一生物に該当するのかもしれません。費用も手間もかかりますのでその覚悟が必要です。着ていく場所も、シチュエーションも限定されるでしょう。
歴史やデザイン、その他、確かに魅力的ではあるが・・・
シンプルながらも絶妙なデザイン。壊れたらリペアも可能。英国王室御用達ブランドというのも魅力的。本国では国民的ブランドなんだそうです。
オイルを塗り込むというアナログな方法で得られる防水・防寒機能、使い込むとレザーとは違ったツヤがでてくるといった他のアウターでは味わうことができない魅力はたくさんあります。日本でもオイルドジャケットの長所を活かした使い方ができる人もいるのかもしれません。
雑誌やインターネット、さらには実際に着ている人を見て単純にかっこいいからと見た目だけで簡単に手を出してしまうと、着ている時はもちろん、着ていない時(保管)にも気を使う必要があるのでタンスの肥やしにすらすることができずに早い段階で手放すことになってしまいます。
ある程度の環境と覚悟が無いとオイルドジャケットを長く使うことはできません。今の状態は明らかに流行り過ぎ。Barbourのオイルドジャケットをファッションアイテムとして使い続けるのは簡単ではありません。
Barbour(バブアー)のオイルドジャケット風ジャケット
最近では、塗り込んであるオイルが少ないライトウェイトモデルや、オイルを全く含まないコットンのモデル、ナイロン+コットン素材「60/40クロス」を使用したモデル、オイルドジャケット風のバケッタ加工をしたモデルも出ているようです。
> 「Barbour®(バブアー) SL(スリムフィット) ビデイル ノンワックス(ピーチドジャケット)購入レビュー」を読む
ユニクロからバブアー風ジャケットが発売
2020年、ついにあの「ユニクロ」から明らかにBarbourを意識したハンティングジャケットが発売されました。
「ハンドウォーマーポケット」こそないものの、見た目のデザインは「Barbour ビデイル」にそっくり。ほとんどの人がこれで十分なのではないかと個人的には思っています。もちろんノンオイル仕様。こちらも合わせてチェックしてみてください。
[写真]左:UNIQLO 右:Barbour
GUからほぼバブアーなジャケットが発売
[写真]左:GU 右:Barbour
GUからはユニクロのBarbour風ジャケットを超えた、ほぼBarbourなジャケットが発売されています。ハンドウォーマーポケットの位置もチンストラップの形状もほぼ同じ。ダブルジップ、内ポケット、袖口のニットリブ等省略されている部分があるものの、その他のディテールは忠実に再現されているとBarbourを使用したことがあると思われる方からの評価も上々。
[写真]GU公式
オリーブ、ブラウン、ネイビーの3色展開で、値下がり後の価格はなんと190円。
ユーザーレビュー|GU公式
良い点 ・価格が何倍もする商品に負けないアピアランス ・着易く手入れの楽な素材 気になる点 ・内ポケットの省略 身長178cm、筋肉質のスポーツマン体型で、通常GUのジャケットはLサイズを購入していますが、この商品はMサイズがジャストフィットです。
英国の某ブランドのジャケットに似ていますが、着る場所や状況を選ぶオイルドコットンと異なり、ポリエステルを主体とした素材のおかげで、着る状況やシーズンが広がり、着心地も軽く手入れも楽で、とても好ましく感じます。 襟のコーデュロイや襟のタブ、比翼仕立て、サイドベンツなどのディテールは忠実なので、遠目には某英国ブランドと区別がつきません。
省略されているのは、ダブルジップ、内ポケット、袖口のニットリブなどですが、内ポケットは有ったほうが嬉しいものの、値段を考えれば文句はありません。 因みに本商品のサイズMで、SLビデイルのサイズ40とほぼ同じです。
[画像]値下がり後 190円
Barbour(バブアー)公式からウォッシュドビデイルが発売
Barbour(バブアー)から「BEDALE SL(ビデイル スリムフィット)」にウォッシュ加工(オイル抜き加工)を施し、オイルを取り除いたモデル、ウォッシュドビデイルSLが発売。人が多い場所や公共交通機関での着用が可能です。ポケットのフラップや前立ての部分にオイルがのこっているのが気になります。
日本でオイルドジャケットを使いこなすのは難しい
購入当初こそ敢えて雨の日に選んで防水機能を楽しんだり、シーズンオフ時のオイルを塗り直す工程も楽しむこともできましたが、しばらくすると着用は釣り、バイクに乗る時に限定されて、オイルの塗り直し(リプルーフ)も苦痛を感じる作業になっていました。今年に関してはシーズン中でありながら終始ベランダに放置。
見た目がカッコイイからと安易に手を出してしまい、5年使用した経験から言わせてもらうと、オイルを馴染ませた生地を使ったジャケットは日本の文化には馴染まない。
着る場所だけでなく着る人をも選ぶファッションアイテムとして使い続けるのはとてもハードルが高いジャケットだと思います。
コンクリートジャングルを生活圏内としている人で移動手段が公共交通機関である人。自らをミーハーだと認識している人、雑誌「2nd」や「POPEYE」といった雑誌を好む流行に敏感な方や、女性の方がファッションアイテムとして普段使いのアウターとして選ぶのであれば、まずはオイルドジャケットではなくオイル不使用のオイルドジャケット風のBarbourのジャケット(Amazon)もしくはBarbour風のジャケット(ユニクロ、GU等)を選ぶことを強くお勧めします。見た目のかっこよさとオイルドであるか否かは無関係です。
2022年2月の突然の実店舗(アウトレット店を除く)の閉店。理由は公表されていませんが、やはりいろんな意味で日本には馴染まなかった。ということかなのかもしれません。
> 続き「Barbour®(バブアー) SL(スリムフィット) ビデイル ピーチド ジャケット(ノンワックス)購入レビュー」を読む