クラークス デザートブーツのイギリス製(イングランド製)は形が良くてかっこいいは本当か?|ベトナム製との違い

「クラークス デザートブーツ イギリス製(イングランド製)は美しい。」は本当か?
「革靴は昔のものの方が品質も作りもよい。」
革靴好きな方なら一度はこのような話を聞いたことがある、あるいは実際にそう感じたことがあるのではないかと思います。
contents
イギリス製のクラークスのデザートブーツのラストは美しい
とある有名スタイリストによると、「イギリス製の時代のクラークスの木型は現行の物よりも明らかに細く、コバの張りも少なくセミスクウェアのようなラストになっていて美しい。」のだそうです。
90年代以降のクラークスは、イギリス製ではなくなっており、以降は現行品含め多くはベトナムで製造されているようです。
参考記事

[写真]クラークス デザートブーツ
(イギリス製 )
イギリス製のクラークスの木型は現行の物よりも明らかに細く、コバの張りも少なくセミスクウェアのようなラストになっていて美しい。
実はワタクシ自身もイギリス製(イングランド製)時代のクラークスのデザートブーツを10年超愛用していて、上記の記事を読む前からこの話は何となく認識していましたが、これ以外のクラークスを履いたことが無いので実感することはありませんでした。

[写真]クラークス デザートブーツ
左:イングランド製 中:ベトナム製 右:イングランド製(10年超愛用中)
先日、とあるリサイクルショップで、「同じサイズ」の「同じ色」、かつ「グッドコンディション」のイングランド製とベトナム製のデザートブーツが横並びで販売されているのを発見。これは検証するチャンスだと思い、2足まとめて購入しました。簡単に見た目の比較をし共有します。
1950年にリリースされたクラークスのデザートブーツの70年の歴史の中で、イギリス製(イングランド製)のものであっても年代やその他の事情で仕様が異なるものがあるはずで(アイルランド製のものもあるそうです)、今回入手したイングランド製のものが上記のスタイリストの指す、「形が綺麗で美しい」イギリス製のものに含まれかはわかりませんのでその点ご了承下さい。
ベトナム製モデルに関しても現行品ではなく、比較的古い90年代もしくは2000年代初期の製造の物と思われる個体なのではないかと思われます。さらに、イングランド製はほぼ履かれていない未使用に近い状態で、ベトナム製は数回~十数回履かれているであろう状態なので若干くたびれた感じに見えますが、この点もご了承下さい。
全体写真
[写真]左:イングランド製 右:ベトナム製
写真左がイギリス製(以下:イングランド製)、右がベトナム製です。左のイングランド製の方が細身であることが確認できます。特に後ろから見ると(写真4枚目)よくわかりますが、イングランド製のコバの張り(幅)が狭いこともわかります。
イングランド製とベトナム製の比較
ステッチ
個人的に一番大きく違うと感じた部分がステッチ部分。並べてみないとわからないレベルではありますが、コバ周りのステッチが数ミリ単位でイングランド製の方が短めの間隔でステッチワークが施されていることが分かります。耐久性の部分では大きく違いが出るという感覚はありませんが、感覚が大きいと手作り感、カジュアル感が出ます。ちょっとした違いですが見た目の印象は変わります。
ヒールやその他の部分のステッチの色もイングランド製の方はアッパーの色に近い目立たない糸で縫われています。個人的には目立たない方が好みです。
トゥの形状/コバの幅
つま先(トゥ)の形状は明らかにイングランド製が細く、ベトナム製は丸い作りになっています。コバの幅についてもイングランド製の方が狭くスタイリッシュな印象があります。個人的には、デザートブーツはカジュアル靴の位置付けなので、丸っこいベトナム製の方が好みだったりします。
アウトソール

[写真]左:イングランド製 右:ベトナム製

[写真]上:イングランド製 下:ベトナム製
つま先部分から踵までのアウトソール全長は両方28.5cm。アウトソールの最大幅はベトナム製が10.5cm、イングランド製は5mm狭い10cm。アウトソールベースですが、細くなっていることが確認できます。両方ともサイズはUK7(25cm)。
革質

[写真]左:イングランド製 右:ベトナム製
昔の革靴は革質が良いとよく言われますが、毛足の長さ、きめの細かさ等、スウェードの経験はそれ程多くはないものの、見ても触っても違いを感じることはできませんでした。スウェードであることが理由なのかもしれません。
シュータン裏

[写真]左:イングランド製 右:ベトナム製
タンの裏には、イングランド製の物はサイズ「G7」(メンズのスタンダードワイズのUK7)、ベトナム製には製造国「VIETNAM」の表記。
インソール

[写真]左:イングランド製 右:ベトナム製
インソールのロゴや文字は同じですが、ベトナム製造以降は製造国の表示が無くなっています。左側は薄くなっていますが、「MADE IN ENGLAND」の表記。クッションはベトナムの方が柔らかく、アップデートされています。
「クラークス デザートブーツ イギリス製(イングランド製)は美しい。」は本当か?まとめ
[写真]クラークス デザートブーツの現行モデル
(公式HP)
革靴に限らず「古い時代に作られたもの」=「現行のものより良いもの」という場合も確かにありますが、クラークスのデザートブーツの製造国、製造時期の違いによる見た目の違いに関しては、あるにはあるものの、一部のマニアを除いて目視でわかるレベルの大きな違いは感じませんでした。
並べて比較してみましたが、クラークスのホームページを見てみると現行モデルとして販売されているデザートブーツもベトナム製ではあるものの、今回入手したベトナム製とは明らかにディテールが異なります。
写真で見ただけではありますが、今回取り上げたベトナム製のものよりトゥの形状、コバの張り等明らかに細くなっており、ステッチの色もアッパーと同系色になっていたりとどちらかというと今回取り上げたイングランド製のディテールに近い作りに変わって(戻って)いました。

[写真]劣化したクレープソール
古いモデルになると、クレープソールの経年による劣化(硬化、ベタつき)は避けることが出来ませんし、インソールのクッションは間違いなく現行モデルの方が優れている等もあり、クラークスのデザートブーツを買う際は、イギリス製(イングランド製)にこだわる必要はなく、ベストチョイスは現行モデルで間違いはないと感じました。

[写真]クラークス デザートブーツ ソール交換
因みに冒頭の記事に登場したスタイリストはイギリス製を絶賛しているにも関わらず、ソールがベタベタしてきたので今は履いていないのだそうです。クレープソールが経年でベタベタしてくるのはデザートブーツの仕様なので、復活を願うんじゃなくて普通に直して履けよ、そんなに気に入っているのなら。と思ってしまいました。
こだわり始めるとキリがない革靴の世界ですが、デザートブーツのシンプルかつ完成されたデザインと履き心地を体験すると考え方が変わるかもしれません。累計1,200万足を販売、20世紀のNo.1シューズに選ばれたクラークスのデザートブーツを体験せずして革靴を語るべきではないと個人的に思います。
クラークスのデザートブーツのソール交換の記事を含めたその他の記事は下記をご参照下さい。
クラークス デザートブーツ その他の記事
Post a Comment.